過労死防止学会第9回大会 開催概要をお知らせします
◇過労死防止学会第9回大会 開催概要をお知らせします(2023/4/25現在)。
来る9月9日、10日に、明治大学駿河台キャンパス・リバティタワーを会場に開催します。
大会プログラムのうち、特別講演・共通論題の報告者が決まりましたが、これから分科会報告者も募集開始します
◇日程・会場
日程:2023年9月9日(土)、10日(日)
場所:明治大学駿河台キャンパス・リバティタワー
東京都千代田区神田駿河台1-1
https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
◇プログラム概要(※敬称略)
第1日目:9月9日(土)
午前:自由論題、テーマ別分科会
午後:特別講演
「自殺予防からみた過労死・過労自殺の課題」(仮題)
竹島正(元自殺予防総合対策センター長)
「世界の過労死の現状、ビジネスと人権」(仮題)
高崎真一(ILO駐日事務所代表)
会員総会
第2日目:9月10日(日)
午前:自由論題、テーマ別分科会
午後:共通論題:地方公務員の長時間過密労働とその対策
「地方公務員(一般職)の労働実態について」(仮題)
森本正宏(自治労・総合労働局長)
「地方公務員の勤務時間制度:地方公務員法と労基法」(仮題)
山口真美(弁護士・三多摩法律事務所)
「会計年度任用職員の問題」(仮題)
上林陽治(立教大学)
「地方公務員の過労死・過労自殺の実態」(仮題)
吉川 徹(過労死等防止調査研究センター統括研究員)
なお、例年通り、自由論題とテーマ別分科会では広く会員の報告を募集します。
※分科会報告者募集は、別途お知らせします: https://www.jskr.net/2495/
◇第9回大会趣旨
過労死等防止対策推進法が制定されて9年になります。この法律に基づく防止対策の基本方針「過労死等防止のための対策に関する大綱」も2回改定されてきました。この9年間に過労死等が減少したのでしょうか。それを確認する一つとして、労働災害と公務災害の請求件数をみてみると、2014年2325件では、2020年3319件でした。残念ながら、減少ではなく、むしろ増加傾向にあるのです。詳細は省きますが、精神障害にかかわるもの、若年層、そして地方公務員で増加している傾向にあります。
法律が出来て、様々なところで多様な取り組みがなされ、過労死防止への意識向上は高まっているとは思いますが、遺憾ながらそれが成果に結びついていないわけです。さらにまた、特にコロナ禍でエッセンシャルワーカーと呼ばれる人々、また医療・保険業務に携わる地方公務員の長時間労働が懸念されるところです。このまま推移していくとしたら、10年前よりも悪化しかねません。そういうことにならないように、惰性に流れることなく足元をしっかりと見直す必要があります。
昨今、今一つ注目すべきことがあります。働き過ぎとそれに伴う健康障害について国際的な関心が高まっていることです。一昨年(2021年)、WHOとILOが過労死の共同調査の結果を発表しました。経済のグローバル化の中で、過労死等が日本固有のものではなくなり世界に拡散していることが示されたわけです。またWHOのテドロス事務局は「(COVID19禍では)在宅勤務が増え、経済が失速したことで、長時間労働とそのリスクが一層悪化している可能性がある」と警告を発しました。その一方で、2011年に国連の人権理事会で「ビジネスと人権に関する指導原理」が全会一致で採択されましたが、その後、企業活動において健康と命を含む人権が軽視されてはならないとする動きが国際的に高まり、それに向かってEU諸国では既に法を制定して取り組み始めています。私たちの国でもいよいよ具体的な行動に移さねばならないことになってきています。
過労死防止学会第9回大会は、以上のことを念頭に、二つの特別講演(自殺予防の課題、ビジネスと人権)と共通論題「地方公務員の長時間過密労働とその対策」のシンポジウムを開催します。
◇共通論題「地方公務員の長時間過密労働とその対策」ついて
この3年間の新型コロナ感染拡大は、「平時」にはあまり気に止めてこなかったこと、必ずしも見えていなかったこと、これらを誰の目にも見える形で示されることになりました。昨年の大会では、女性労働、フリーランス、保健師や医師など多方面からの報告を受け、共通した課題があるものの、以前から抱えていたそれぞれの領域に特有な困難がコロナによって一気に顕在化したことが明らかにされました。過労死防止に向けた課題を明らかにするためには、それぞれの産業や分野と領域に特有な特徴や慣行があり、それが長時間過密労働やハラスメントにどのように関連しているのか、どのような対策が求められているのか、これらを深掘りしていくことが必要です。
そこで第9回大会では、公務公共の分野、地方自治体の職員に焦点をあてて、長時間・過重労働、ハラスメント等の実態と課題を考えることにします。
自治体職員の多くは公務公共の担い手としてその仕事に使命感とやり甲斐をもって働いています。だからこそコロナ禍であっても、いやコロナ禍だからこそ、長時間労働をも厭わず身を粉にして働いてきました。その一方で、働き過ぎを是正するために「働き方改革」として、時間外労働の上限が設けられました(労基法第36条の改訂、2019年4月施行)。地方公務員にもこれに準じた規制を受けるようになったのですが、このコロナ禍ではその上限を超えた異常・異様な長時間労働が報告されています。また総務省は、コロナ禍の最中にスタートした非正規職員の新しい制度=「会計年度任用職員制度」を活用することを推奨したのですが、その処遇を巡っても多々問題が報告されています。公務・公共に相応しいとはいえず「やりがい搾取」ではないかとの批判もあります(毎日新聞2023年2月9日)。地方公務員の過労死・過労自殺について、過労死等防止調査研究センター(独立行政法人)は調査研究報告書を公表していますが(2020年)、それによれば、地方公務員は課長未満の若年層の「精神疾患」による犠牲者が多いという結果でした。
このように、地方公務員の「働き方」をめぐっては、民間企業の労働者とは違った固有の問題点があります。その諸問題を議論し、その解決に向けた課題を明らかにするため、「地方公務員の長時間過密労働とその対策」について議論します。
以上、お知らせします、過労死防止学会・事務局